胎に両側に大きな2つのアイと放射紋のモザイク管玉　黒・ブラウンと白で飾る希少玉

本品は、黒い茶（ブラウン）と灰色がかった白、この2色で、大きなアイと広がる放射紋の象嵌モザイク管玉です。黒と茶の大きなアイ（瞳）が胎に2つ施され、その周りに灰色がった白の枠で瞳の保護円盤を形作り、アイから10本の白（黒茶）の放射紋が施されています。　芯軸内側まで2色部分が達し、モザイク板を芯軸に丸めて成形し、胎は滑らかで艶々としています。胎一杯に広がる放射線の先端にあたる。管玉の片側側面に細い縦線が見られ、縦線の左側と右側で放射線にズレが生じ、反対側でも同じです。　ローマ期のモザイク管玉では、芯軸にモザイク板を巻いた跡の縦線は1本で、モザイク紋のズレは1か所に限れます。これに対し、本品では、左右両側に見られ希少な特徴を示します。　制作時期は、7-13Cと詳しい方から入手時に説明されました。研究書A Bead Timelineに類例は見られませんけれども、ビーズ研究の先駆者Beck,Cの著書（Classification・・）には、類例の制作方法が記載されています。モザイク板2枚接合ビーズ（double strip beads）と記し、製法は、本品のモザイク板、各1枚を芯軸上下に置いて軸に沿って丸め、2枚の両端を接合し管玉を成形します。この方法ですと、接合縦線が左右両側に残り、縦の左右で放射線にズレが生じます。モザイク板1枚を折込製法で成形するササン・ビーズでも、本品と同様に、軸芯の内側まで表面のガラス（黄や緑の）達しけれども、その特徴的なアイと放射線モチーフは、胎に満遍なく相当数が施され、黒茶と白の配色もほとんど見ません。　本品は、胎の滑らかさやモザイク2枚接合という新しい製法を考慮しますと、入手に説明を受けた7-13Cの制作時期のうち、多分、後半が該当し、イスラム前期と推測されますが、類例がどこで制作されたかは判明しません。Beckの指摘する、2枚接合ビーズの制作時期・場所が判明すれば、もう少し明らかになるのかもしれません。　本品は、このように類例やその記載に出会うことのない、希少なモザイク管玉で、しかし、製法の研究はされているビーズです。今後、類例に出会うことを期待し、現在1つだけ確認される、唯一希少の興味深いビーズです。なお、片側アイの傍に、古い小さな表面剥落（1㍉ほど）が見られます。サイズ　縦　約13㍉　幅　約　7㍉　孔径　約3㍉

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